記念講演「これからのパークマネジメント」

講演者 中瀬 勲 兵庫県立人と自然の博物館長(兵庫県立大学名誉教授)

日時:平成25年6月12日(水)15時~16時

場所:服部緑地都市緑化植物園 第1スタジオ(講習会室)

参加者数:71名

 博物館経営で直面された課題を事例に出しながら、組織マネジメント、公共施設のマネジメントに求められていることが何かをご講演いただきました。

都市公園という公共空間の可能性と共にマネジメントの重要な役割について貴重な意見を頂きました。

「 これからのパークマネジメント 」

中瀬先生

1.はじめに
○マネジメントを意識した契機は『ひとはく』での取り組みである。『ひとはく』のことを公園におきかえてもらえればパークマネジメントの参考になる。

○計画・設計する人や創る人と運営するひとの分離は問題。使い勝手が悪く、苦労する。ひと・ものはあるのにお客が来ない状態になる。当時の知事からこのままでは博物館をつぶすといわれ、研究者みんなで集客の方法を勉強した。

○その際、同業者でなく、レジャー施設、銀行、FM ラジオの関係者を招き、経営理論、固定的経費、流動的経費、経営採算点、顧客満足度顧客の囲い込み、一元さんから、リピーター、支持者、支援者を経て信者つくる取り組みをはじめた。

○他にないものを先に作る事は大事であり、『ひとはく』で短期・中期目標の設定と実践を行う博物館運営マニュアルを作ったところ、日本博物館協会からモデルとして活用され日本の博物館の基準
になった。

○教育委員会と一線を画し、自分たちで提案し、実践する取り組みをスタッフみんなで行った。月例報告会議、経営戦略会議の内容もスタッフ全員で共有した。

○提案型ですすめていくことで、スタッフもいきいきとした良い組織になった。関西支部もこの取り組みを参考にし、他よりも先にマニュアルなどをつくっていけばよいのではないか。

2.パークマネジメントへのきっかけ

①コミュニティガーデン
・シカゴのコミュニティガーデン(P-PATCH COMMUNITY GARDEN)は Housing and Human Services という部局でハードとソフトが一体的にすすめられている。
・公園を拠点にしてコミュニティを形成することや地域の問題は地域で解決するなど地域の『ニーズ』『ウォンツ』を公園づくり・運営に展開させている。

②植物園・博物館での試み
・ ニュージーランド国立博物館テパパでは、新たな職能として『コミュニケーター』『インタープリター』『プレイリーダー』『コーディネーター』が発生している。
・ 彼女らが 5 歳以下のキッズプロジェクトなど博物館の企画から運営まですべて行っている。常勤職員として 20 万円/月以上の給料をもらっている。
・ 日本(『ひとはく』)では日々雇用の職員がこの役を担っており、今後このような人材を日本でどのように育てていくかが課題である。

③阪神・淡路大震災後の活動
・ガレキに花をさかせよう運動をみんなで実施した。ここでは、県や市、ボランティア、市民と一緒に活動し、こちらからの提案で都市計画道路用地に花壇を創った。その結果、後追いで神戸市
の緑のスポット創生事業が作られるに至った。

④PLY for ALL との出会い
・キーワードは主流化から統合化であり、例えば車椅子にのっている子供は障がい児ということで扱うのではなく、そのような特性を持っている子どもとして扱わなければならず、これには人が介在しなければ成立しない。これはパークマネジメントの概念と同じであり、使う人と空間をつなぐ人材の介在が必要ということと同じになる。

⑤そして有馬富士公園
・有馬富士公園は日本で初めて計画・運営協議会を設立され、地域を元気にする公園としてその運営に携わった。そこではじめて公園に必要なコーディネーターを提案した。

3.これまで得られた知見

①新しい公
・公領域と、私領域がいっしょになって取り組まなければならず、公園はまさにその領域にあたる。

②ビジョンの共有とマネジメント
・ かつての公園は、計画・設計・施工・管理だけであったこれに構想、運営をいかに盛り込むかが今後のパークマネジメントの課題である。

③連携により高まるコミュニティのパワー
・自治会などの地域型市民活動と NPO などのテーマ型の市民活動は中が悪い。しかし、阪神淡路大震災ではうまく役割分担することで、活動企画・運営、行政との調整などがスムーズに進んだ。

④公園・地域づくりなどでのマネジメントシステム
・公園・地域において整備や維持管理など行政が責任を持つ範囲と使うなど官民連携により民の運営主体が責任を持つ範囲とが重なる活かし育てる範囲があり、これについては、官民で協議・検討し、実施する必要がある。

⑤2 つの三角形
・パークマネジメントは無関心層を市民層に代えていかなければならない。市民層を育てるには、生涯教育や社会教育を公園で展開していくところにわれわれの仕事がかかわることができる。

4.パークマネジメントの課題

①パークマネジメントの概念
②パークマネジメントと指定管理 ~その不幸のはじまり、勘違い~
③関係者により興味は異なる ~更なる勘違い~
④さらなる課題群

.おわりにパークマネジメントと指定管理者制度

・指定管理者制度の PDCA:公園・緑の基本的な意味、新たな意味などを理解し、取り組み第 3 者期間
で評価してもらう必要がある。