講演者 奥貫 隆 滋賀県立大学名誉教授、湖東地域定住支援ネットワーク代表
1.はじめに(背景について)
― 省略 ―
2.都市文化としての公園緑地について(建築と庭園、都市と公園、国土と自然、人間と植物)
○都市空間:世界の各国の都市空間はまちなみ、石、看板、色調などすべて統一されており、電柱も見ることはありません。そして、そこに手に職を持った人々が住み続けています。このような風景を見ると日本の都市やその暮らしについて、考えるきっかけになります。
○農風景:フランスは美しい農風景を守るために補助金が出ます。イタリアも土地利用も含めた景観づくりを州単位で行っています。
○美しい都市風景は田園風景と一体のものであり、都市風景を守るためには田園風景を守ることが必要です。都市と田園は表裏一体のものであると言えます。
○日本も田園風景の保全について参考にすべきであると考えます。
○古代エジプトのメンフィス(古代王朝の遺跡)にはパティオの存在が確認されており、紀元前から都市と緑の役割が示されていたことがわかります。
○人間は、水、土、生き物と共存していないと生きていけず、その具体的な形態が庭園や公園であったということを感じます。
3.これからの公園を魅力的にするためには
1)花空間をどう創るか
○滋賀県では、公園だけでなく、住宅の庭先、生垣の花も非常にきれいです。
○市民の方の花の選び方、植え方、デザイン等はプロと同じ、もしくはプロになりかかっている状況です。
○我々は公園のプロとして彼らより先を行っていないと魅力ある公園をつくることはできません。
○国営昭和記念公園では、オランダのキューケンホフ公園から講師を招き、花の風景を創り上げたり、国営常陸海浜記念公園では同様の手法でスイセンやチューリップ、『みはらしの丘』のネモフィラを使った花の風景を創り出しています。
○滋賀県大津市にも柳ヶ崎公園が季節ごとに、決め細やかな植物を用いて来園者に楽しんでもらっています。
2)アート、コンテンポラリーアート(現代芸術)
○越後妻有トリエンナーレでは、国内外の作家やボランティアを募り、そこに住んで準備し、『いのち』『時間』『空間』をアートで田園風景の中に表現しています。
○カタチや整形などの完成形だけでなく、地域の人々を巻き込んだプロセスを重視しています。実際その土地に立って感じたことを表現し、表現したことが地域に還元されるようにすることが大事です。
3)公園緑地と農作物
○東京都練馬区の農業体験型市民農園の例ですが、都市の中の家庭菜園の場として非常に人気があり、年3万円の費用で単位面積あたりの収入はお米をつくるより上回っており、農業経営上も成り立っているようです。
○このことから、公園緑地の中でも昔人気があったが、時代のニーズの変化に合わせて使われなくなった場所、ヘタ地などは、農作物を作る新しいレクリエーションの場として提供することを提案します。
○さらに収穫祭などを行えば、コミュニケーションの場、交流の場にもなります。
○もてあましている土地については、花・緑の次は野菜でいかがでしょうか。
4)市民参加
○工夫次第で市民が本気のモードで自分の公園として花・緑を育て、楽しむことができると考えています。
○公園緑地の専門性の上に成立する市民との連携のカタチが市民参加であると思っています。
○ボランティアの方々は市の職員から知識、技術を教わっているうちにセミプロのレベルになっていると思います。
○一人一人、花・緑に対する意識や育成の技術等が高いレベルになってきており、都市公園という場はこのような市民の要求に応えるものでなければなりません。
5)情報提供
○いつ、どこで、何をしたか等、公園の利用状況に関する情報提供が必要です。
○HPではアクセスするたびに情報が変わるような仕掛けが必要です。
○国営常陸海浜公園における花情報はホームページから花カレンダーの検索で入手でき、ネモフィラの風景等はユーチューブで紹介するなど『自分たちで情報を発信しなければならないという視点』が重要です。
○ニューヨークのセントラルパークの公園マップのように公園の顔となり、さらに公園の品格が上がるようなマップをつくることも重要です。
○また、プロや大学に頼むのもいいかもしれません。学生の若い視点もどんどん使っていいただければいいのではないかと思います。