肥山 陽子氏(西武造園株式会社)より
【深北緑地遊水地公園における管理運営と課題】
1)深北緑地の概要
○深北緑地は大東市、寝屋川市にまたがる41haの公園です。縄文時代は沼地であり、昭和のはじめまでレンコン産業が盛んでした。水害が多い地域ということで深北緑地は遊水地公園として整備されました。
○公園はAゾーン(池、レンコン畑など)、Bゾーン(遊具、広場など)、Cゾーン(野球場、テニスコート、ドッグランなど)のゾーンに分かれています。
○遊水地機能として、寝屋川からの水は、A,B,Cの順に越流します。
2)越流の状況について
○越流は、2102年の集中豪雨の時と2013年の台風18号の時に発生しました。
○水防体制としては、寝屋川の水位が3.5mで警戒配備、3.9mで公園利用禁止、4.75mで堤防から公園へ水が流れ込みます。
○グラフでわかるように2012年の集中豪雨の時は通常水位からわずか1時間で越流しました。2013年の台風18号の時は、水位が下がらず7時間ほど越流がつづきました。
○越流した水の排水は再度寝屋川に戻すため、公園の水が引くのは5~6日かかります。
3)越流の被害について
○1年草の花類は全滅、バラ類の低木やセージなどのハーブは無事でした(但しセージは2013年時には全滅)。
○2012年時は、土砂やヨシが公園内に流れ込み、公園の擬木柵が破壊されました。2013年時にはそのような被害はありませんでした。
4)復旧作業について
○復旧作業については、まず、最初に入口にバリケードを設置し、利用者が公園を利用しないようにすることが必要です。すべての入口で対応しなければならないため、かなり大変でした。
○排水には2~4日ほど日数を要しました。C地区はあまり浸水がなかったため、点検などが済むとすぐに開園できました。Aゾーン、Bゾーンについては7日~10日ほどで開園できました。
○具体的な作業は、手作業で泥等の堆積物を除去した後、高圧洗浄を行い、さらに残った汚れをデッキブラシでこすり取り、また高圧洗浄を行います。その上で、消毒及びふき取りを行うという手順で作業を行いました。
○2013年時の2回目の越流には、これらの復旧作業をスタッフが単独で行わず、チームを組んで作業に取り組みました。このため、1回目よりは効率良く復旧作業が進みました。亀の子たわしでこすり、高圧洗浄後、消毒すると復旧作業が効果的であるということも把握できました。
○これは復旧後の写真ですが、植栽樹木の葉についた泥は手でこすっても落ちず、刈り込むか、次の新しい葉が成長するまで待つしかありません。
○越流があったことを知らない利用者の中には、これを見ると清掃が行き届いていないと感じる人も多く、管理者として歯がゆい思いをしました。遊水地機能を有する公園としてのPRがもっと必要であることを感じました。
5)復旧と利用の関係
○2012年時は寝屋川が一気に越流し、土砂や漂流物が擬木柵を破壊するなどの被害もあったため、全面復旧まで27日かかりました。2013年時には、徐々に寝屋川の水位が上昇し、ゆっくりと越流したため、前年度のような被害もなく、スタッフの復旧作業の経験も活かされたことから、20日後に全面復旧ができました。
○地域の理解も得られ始めています。2012年時は入口のバリケードが壊され、人が公園内に進入することがあったが、2013年時にはそれがなくなりました。
○復旧時期にもかかわらず、夕涼みイベントのとして野外映画イベントを大阪産業大学や地域の活動団体などで構成される実行委員会により実施しました。
○イベントの運営には、企業から協賛金を集め、それを運用できたことも成果でした。2012年時は、開園10日後にイベントを実施し、375人の参加がありました。2013時には開園5日後にイベントを実施し、1,084人の参加がありました。
○実行委員会の自主的な運営により、公園スタッフは復旧に集中しながら、イベントも開催することができたと思います。
6)今後の課題
○1つ目は、近年の状況から、何度越流がきても十分に回復できるよう遊水地機能の強化が必要であり、草刈の徹底や遊水に強い野草を用いた花壇づくりなどを行う必要があると考えます。
○2つ目は、復旧作業の短縮化が必要であり、地域やボランティの協力体制を確立することが必要であると考えます。そのためには今回紹介した、夕涼みイベントのように実行委員会による自立したイベントを行う中で、越流があったときにどうすべきか等をいっしょに考えていければ良いと思っています。